【完】君に惚れた僕の負け。
「……やっと見つけた……。ごめんなさい、朱里くん」
なんでこんなところに……。
こんな寒いところにいたなんて。
もっと早く来ればよかった。
「手が氷みたいになってるよ…」
触れた手は一瞬で引っ込められてしまって、拒否された手に冷たい感触だけが残る。
「どうしよう……そうだ、あたしのコート着て」
……って、あたしコート着てくるの忘れてる……!
「馬鹿かよ……風邪ひくよ」
はぁっと白い息を吐いて、朱里くんはコートを脱いだ。
「着ろよ」
ぼふっと投げかけられたコートに朱里くんの温もりが少しだけ残っている。
ぼろぼろと涙が零れてきた。
こんなに、優しくて大切な人に、あたしはなんてことを言ったんだろう。
「酷いこといっぱい言ってごめんね……」
朱里くんの体にコートをかけ直して、冷え切った体をぎゅうっと抱きしめた。
他意なんてない。
ただ冷え切った体を温めたいだけ。
「朱里くん、本当にごめん」
「なんで恋々が謝んだよ。悪いの俺だろ」
「朱里くんはなんにも悪くない……。傷つけてごめんなさい」