【完】君に惚れた僕の負け。
「つか、痛い。放して」



あたしの体を押しやって、顔を背けた朱里くんは「さむ」と震えていて。



「なんでこんな寒い亀の中にいたの……?」


「……人生を反省してたら行きついた」


朱里くんの背中をさすって、摩擦で熱をおこす。


「恋々、帰れよ。風邪ひくから」



それは、別々で家に帰るって意味?



それとも……同居解消ってこと?



「……一緒に帰るのはもうだめ? もうあたしとは一緒に暮らせない?」



「俺と暮らすのきついのは恋々でしょ。もう俺のこと無理なんじゃねーの?」



そんなわけない。

ありえない。



「全部、言葉間違えたの。謝って許してもらえると思えないけど……あたしは一緒に住みたい」



「一緒にって……。また俺が恋々に触っちゃったらどうすんの。あんま自信ないんだけど」



「触ってほしくないとか、嘘だから!」



「嘘っぽくなかったよ」




傷ついた顔で笑う朱里くんはゆっくりと亀の外に出て立ち上がった。



「とりあえず送んね」



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