【完】君に惚れた僕の負け。
信号待ちの間、隣で震える朱里くんの手を包んだ。
これくらいしかできないから。
息を吹きかけてこすって。
「……あたしの体温あげる」
ぎゅうっと両手を握る。
「でもあたしの手もそんなにあったかくないかな」
手袋とかマフラーとかなんにも持ってこなかったあたしのバカ。
どこなら暖かいかな……。
「あ……首はあったかいかも」
朱里くんの両手を髪の内側に入れて、首に貼り付けた。
ひぃっと声が出そうなほど、朱里くんの手は氷みたいに冷たくなってる。
こんなに体が冷えたのも全部あたしのせい。
ごめんね。
……早く温まって。
「馬鹿。お前が冷えんじゃん」
離れようとするその手、あたしは意地でも離さないから。
「あったかい?」
朱里くんは頷いたまま視線を真下におとした。