【完】君に惚れた僕の負け。
「この馬鹿。されるがままにされてんなよ」
このどうしようもない馬鹿をぎゅっと胸に抱きしめた。
好きで好きでたまんない。
同じ気持ちが恋々にもあればいいのに。
おそるおそるという様子で俺の背中をぎゅっと握った恋々の手。
「……朱里くん、亜瑚ちゃんのこと好き……?」
胸にこもる声が聞こえて、ため息がでた。
それ、まだいう?
……こいつって本当にバカだよね。
もし俺が亜瑚のこと好きなら、恋々にこんなことするわけなくない?
「前も言ったけど俺の好きな人は亜瑚じゃないよ」
「じゃあどうしてコンビニで……別れろとか言ってたの?」
……あぁ、結構やり取り聞いてたんだな。
だったらそれ利用させてもらおうかな。
前に“元カノと付き合った理由は好きな人に似てたからだ”って話したけど、もちろん忘れてないだろうな?
「亜瑚ね、恋々にすげー似てて馬鹿でアホなの」
「……っ」
お。もしかして……伝わった?
そう期待したのは一瞬。
「ひどい悪口……っ」
わかってねー。
ガクッとしつつも笑えて来る。天才的な鈍感。
「そんなアホな亜瑚がDV男にたぶらかされたら、誰でも心配するっていうか」
DVするようなやつに友達が困ってたら、普通、誰でも助けるだろ。
「とにかく恋愛感情なんかなんもねーよ」
「そうだったんだ……亜瑚ちゃんそんなことに……。朱里くんえらかったんだね」
感動するみたいに目を輝かせた恋々は。
「……女の勘はずれちゃったな」
なんて照れ臭そうに続けてるけど、女の勘なんて冴えたものがお前にあると思うな。
「恋々には残念ながらそういう類のもの備わってねーから」
こつんと頭をたたくと「え?」と眉根を寄せて不服そうに唇を尖らす。