【完】君に惚れた僕の負け。
そして、16年朱里くんと過ごして初めて知ったけど。



「朱里くんって歌がアレだね……」


「アレってなんだよ」


カラオケはあたしが避けてたっていうのもあって、知るタイミングがなかったけど、こんなに最低なデュエットを成し遂げちゃうなんて信じられない。


ここは、はっきり言おう。


「音痴だった」


「人のこと言えねーだろ」



ふたり同時にマイクを置いてドリンクを飲んだ。


そして同時にマイクを持ち直す。


「次何歌う?」


「これは?」


「いいね」



ピッとデンモクから送信して、不協和音のデュエットが始まる。


タンバリンを振る手がつかれるほど一通り盛り上がって。



【精密採点 25点】なんていう盛り下がるものは朱里くんが「うるせえ」って消した。




「あははっ。喉痛くなりそう!」


「まだいけんだろ」


「うん、いけるーっ!」



なんだ、カラオケって下手でもたのしいんだ。



ていうより、朱里くんと一緒なら多分なんでも楽しいんだろうな。



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