【完】君に惚れた僕の負け。
いっぱい歌って、さらに1時間延長しちゃった。


気持ちうまくなったんじゃないかな?


「朱里くん、次何入れる?」


「さすがに疲れた。ちょっと休憩」


「……だね」


ずっと笑いっぱなしだから、あたしも笑いつかれた。


並んで座ったソファにもたれると、朱里くんがあたしによりかかってくるんだもん。


……そんなのドキドキするのに。


だけどあたしの気持ちなんか、朱里くんはお構いなしで、彼はのんびりと寄りかかっている。


ただのちょうどいい背もたれとして使っている気がするけど、それでもいっか。

うれしいもん。



こみ上げる愛しさに目を細めながら、朱里くんの方に顔を向けた瞬間、髪からほのかにいい香りがした。


朱里くん用のシャンプーはあたしのより安いはずなのに、なんでこんなにいい匂いなんだろう……。



「なに?」


「あ。朱里くんいい匂いするなぁって思って」


「……変態」


「えっ」


そんなつもりなかったのに!
そう思ったから言っただけで……!



言い訳も思いつかず慌てふためくあたしに、顔を近づける朱里くん。


首元に息がかかって、どっきぃっと心臓が跳ねる。


「な……なに?」


「恋々もいい匂いするよ?」



――にや。


あたしを見上げる朱里くんの意地悪な笑み。



たくらむような笑顔が心臓を余計にせかしていく。


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