【完】君に惚れた僕の負け。
支度を済ませて神社に着いた。


神社には普段おりていない紅白の幕が下がっていて、境内には神社っぽい笛の音が流れている。


お焚き上げのけむりと、人混みと、正月の雰囲気のおかげで、恋々もやっと顔を上げた。


参拝の順番が回って、手を合わせる恋々。


「……去年はいっぱいありがとうございました」


そんな小さな声が聞こえてきた。


……なんでいちいち可愛いんだろう。


でもわかるよ。お礼を言いたくなるほど、去年は今までで一番楽しかった。


恋々とずっと一緒にいて、学校も一緒で。


一番近くて。



……この鈍感女にこの思いが通じることはないけど。



片思いとか両想いとかそんなことにこだわる必要ないかなって気もする。



もう俺は残念ながら、無償の愛の領域にいるんだと思う。



“俺を好きになって”って自己中なことばっかり思ってたけど、今はそうは思わない。


恋々が好き。


ただそれだけ。



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