【完】君に惚れた僕の負け。
「俺、誰かさんのせいで早起きも身に着いたし、朝早くでも夜遅くでも。恋々が呼べばいつでも行くよ」



繋いでない手であたしの涙をぬぐう朱里くんは呆れっぽく笑う。



「いつでも……?」


「うん。いつでも」


「嘘だぁ」


「嘘じゃねーし。1秒はさすがに無理だけど走ってやるよ」



もう、だから……余計涙でるんだよ、そういう優しいのって。



「走ったら転ぶよ……」


「お前と一緒にすんな」



――ぺち。


おでこに落ちたデコピンは間抜けなくらい優しい。



「……痛くない」


「痛くしてない」


「……ふふ」


手はつないだまま、朱里くんの方を向いた。


綺麗な横顔は、天井を見ていて。


「……さみし」


「まだ言う?……俺まで寂しくなるからそれ以上言わないで」


「……寂しくなるの?」


涙を拭って、目を見開いた。



ずっと飄々としてた朱里くんも、あたしと離れるの寂しいって思ってくれるの?


朱里くんはふっと笑みを浮かべてからあたしに目を移した。



「……好きなやつと離れて寂しくないやついる?」


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