【完】君に惚れた僕の負け。
「……は?」
ぴっとりとくっつく背中から、朱里くんの心臓の音が聞こえる。
「あれ、心臓……速い?」
気のせい?
「……うるせえ。お前はどうなんだよ」
「どうだろう」
胸に手を当てて見ると、あたしの方が速いくらいだ。
「へへ、あたしもすっごく速かった」
人のこと言えないや。
くすくす笑っていると、朱里くんの声が体に伝わった。
「……向き合ってしてもいい?」
返事もままならないまま。
朱里くんの体がこっちに寝返りを打つ。
目が合って、心臓が跳ねて、そうしているうちに、両手で抱きしめられていた。