【完】君に惚れた僕の負け。
「レポートって?朱里くんがパパとママに送ってたの?」
「そうよ。“毎日三回様子を送ってくれ!”なんていうパパのお願いを朱里くんが快諾してくれてね。……ねぇ?迷惑だったでしょう?」
ママの視線が朱里くんに移ると、朱里くんはゆっくりと首を横に振りながらほほ笑んだ。
「まさか。おじさんとおばさんを心配させたくないし、連絡とってた方が俺自身も安心で来たんで。海外って治安が悪いところもあるから……」
「……ッ、朱里くん!」
ああまたパパとママを感動させちゃった。
そんな両親とぶりっこ朱里くんの間に分け入った。
「あたしも朱里くんのレポート見たい」
「……恋々。大したこと書いてないよ」
優しい声の裏に、副音声が聞こえるようだった。
”決して見るな”と。
その目の強さには、逆らえなくて。
「……なんでもない」
あたしは負けた。
でもそうやって、あたしのために動いてくれていた朱里くんのことを考えるだけで、胸があつくなる。