【完】君に惚れた僕の負け。
「いつか海外転勤になることは幼稚園のころから言ってただろう! 覚悟はできてるはずだ! いい加減腹くくりなさい!!」
パパの怒鳴り声にリビングの空気がぶるっぶる震えてる。
だけど負けるわけにはいかないあたしは半泣きで返す……!
「海外に引っ越すなんて嫌だよ……! あたし、日本語しか喋れないもん……っ!」
高2になるこの春、あたしはバンクーバーに引っ越すことになっていた。
バンクーバーってどこかな?ってところから始まるでしょ?カナダだよ。
「あたし……ひとりで日本に残る……」
「無理に決まってるだろう! 女子高生が一人なんて危ないに決まってる!」
ぴしゃりと怒鳴りつけられて縮こまった体を、隣でぽんと叩くのは、朱里くんの大きな手のひら。
そして冷静で突拍子もない彼の声が続く。