【完】君に惚れた僕の負け。
――参列者。


そう言われて広がる光景はとってもリアルだった。



純白のドレスの新婦に腕を掴まれ、バージンロードをエスコートする新郎、朱里くん。



あたしはフラワーシャワーを幸せいっぱいのふたりにかけるんだ。



祝福を……するなんて。



ふらっとした足元を踏ん張ってあたしは両頬をパチンと叩いた。



「……そんなの無理!ぜったいいや!」


「じゃあどうするの?」


「どうって……」


「恋ってのはね、待ってるだけじゃだめなときもあるのよ」


「……でも」


「恋を名前に二つも入れてあげたんだから、勇気出しなさい」


頭をくしゃっと撫でるママの手が久しぶりで、あったかくて。


……うん。と頷いた。


差し出されたコートを受け取って、勢いのまま玄関を出た。


「……、いってきます!」


「いってらっしゃーい。がんばれぇ~」


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