【完】君に惚れた僕の負け。
(SIDE朱里)
恋々が来ることは想像の範囲内。
でもなんで俺……抱き着かれてんの?
心臓うるさ……。多分俺の方の心臓が。
つーかね、恋々は背中向けてるから気づいてないんだろうけど。
俺今、道路の挟んで向かいで農作業してる隣んちのばーちゃんと目ぇ合ってるから。
隣のばーちゃん、ぎょっとしながらよそよそと立ち上がったよ。
すいません。こいつ頭がちょっと……。
そういうジェスチャーを送ると、ばーちゃんは納得したようにうなずいて、再び農作業に取り掛かった。
「……どうした?」
「あのね……」
覚悟を決めたように俺から離れた恋々は、何か言いたげな目をしてる。
真っ赤な顔と、不安そうな上目遣い。
こっちまで心拍数おかしくなりそうな緊張感がはりつめている。
思わずごくっと唾を飲み込んだ。
何、恋々。
多分だけど、この雰囲気って……もしかして。
俺の心臓はかつてないほど速く脈を打つ。