【完】君に惚れた僕の負け。
いや、待て。


期待の二文字は何度も粉々にされてきた。


落ち着けって、思うのに。



……恋々の表情が、どうしても恋する乙女に見えんの。



「朱里くん、あの……あたしと……け、け、け……」


「け?」


け……?


好きとか、付き合ってとかって来るんじゃないかって、期待したのに、「け」?


好でも付でもなく、「け」始まり?



……またかよ。


――期待。それは無残に崩れ落ちていく。



力が抜けて、笑えてくるわ。



「言ってみろよ。聞いてやるよ」



ふっと片側の口角をあげる俺は完全な自己防衛。



どんな角度で肩透かしくらっても、ダメージゼロだよ。


そんな強がりで、からかうように恋々を焚きつける。


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