【完】君に惚れた僕の負け。

「どうした?食べないの?」


――ぱく。



美しいフォルムの卵焼きを白い歯でかじる朱里くん。



「ううん……いただきます」



しっかり両手を合わせる。


……って、あれ?



「お箸は?」



「俺は知らない。入れてこなかったの?」



「え……っだってもうお弁当包まれてたからてっきり入ってるかと」



「それは人に任せすぎだよね?」



「うう……おっしゃる通りで」



どうしよう……。



「手で食え」


「ひどい……」



どこかに割り箸売ってるかなって考えたとき。



あたしが持つお弁当に、朱里くんのお箸がひょいっと伸びてきた。



お手本のような美しいお箸の持ち方でつままれたお花型のおかず。



「口開けて?」



「ぃえ!?」



変な声が屋上に響いた。



「恋々ちゃん、あーん」



にや、片側の口角をあげて見下ろす彼はぜったいあたしの動揺を楽しんでる。



羞恥をあおる、その目……。


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