【完】君に惚れた僕の負け。
「なんでチョコしかたべないの? ちゃんとおいしいよ」
「俺、他人が作ったもんが体に入ると蕁麻疹でんの」
「うそばっかり。あたしの作ったご飯たべてるじゃん」
お前は他人じゃねーだろ。
「でもそう言えば、バレンタインの日の朱里くん『いらない』とか言って、女の子泣かせてばっかりいたよね」
「あたりまえじゃん。得体のしれないもの食べたくない」
チョコチップをまた一粒口に入れる。
「だからあたしも作ったことなかったけど。照れて突っぱねたんじゃなくて潔癖だったんだね」
照れて突っぱねたとか思われてたのかよ。
恋々の目には俺ってそんなダサいひと映ってんの? え?
――ごほん。
よく聞いて。
「ていうより、俺は好きな人が作ったものしか食べたくないの」
「へぇー。わ、見てこの包丁!切れ味すごいよ!」
じゃねーよ。
なに聞き流して通販番組見てんだよ。
今かなり大事な話してんだけど。
「じゃああの通販の包丁で俺に毎日料理作ってよ?」
”好きな人の作ったものしか食べたくない”んでね?
「えー?家にあるのでいいよ。最近結構よく切れるし」
「……それは俺が研いでるから」
「そうなのー!?なんか切れ味が鋭くなった気がしてたの」
「お前こそもうちょっと鋭くなれない?」
この女、鈍感すぎて吐き気がするわ。