山窩村
山沢トンネル
夕日がチラチラと見え隠れし、私は少し鬱陶しく感じて眉を細めた。カラスと虫の鳴き声、草木が風に揺られる音が周りから止めどなく聞こえるのを感じながら、私達四人は古びたコンクリートの上を自転車を手押ししながら歩いていた。
私達は山沢トンネルへ向かうために山沢山にいた。車通りは少なく、コンクリートの外側は雑草が生い茂っていた。
標識やガードレールは錆びていて、まるで人間社会に捨てられた山道のような道路。
急な坂道という訳でもないが、トンネルまでの距離は意外にあり、あまり運動を得意としていない守は息を切らしていた。
「大丈夫か守?めっちゃ汗だくだけど。」
「大丈夫に見えるか?お前らと違ってこちとら運動音痴なんだよ...おい、その山沢トンネルはこんなになるまで行く価値あるんだろうな?」
守は額から汗を垂らしながら私と莉音に威圧的に質問をしてきた。莉音は別の汗をかきながらスっと守から目線を逸らした。
実際、山沢トンネルは心霊スポットとしては全く有名ではなかった。行ったら何か気分が悪くなるとか、写真を撮ったら何か変なものが映ってるとかそんなのではなく、ただ不気味に感じる程度のレビューしかなかった。
「あ〜....私もあんまり詳しくないからね〜...薫は何か知ってる?」
「え!?...私もあんまり...」