山窩村
山沢トンネルは他の心霊スポットを小馬鹿にしているかのような短さだった。確かに古びたコンクリートや草木が生い茂っているので雰囲気は多少なりともあるが、百メートルあるか自信がない程の長さ。
入り口に立ってすぐ先には出口が見えるという拍子抜けな心霊スポットだった。
それを見た守は呆れを通り越して怒りを感じたのか、ピクピクと瞼を痙攣しながら引き笑っていた。
「ほ、ほほぉ〜。これはこれは...随分と凄い心霊スポットじゃねぇか....帰ったら早速罰ゲームだな。」
「ま、守!まだだから!トンネルの中に入ったら凄いことが起きるかもしれないじゃん!諦めないで!」
莉音は守にしがみつくように頼み込んだ。守は溜め息を吐くと自転車を押しながらトンネルの中へ踏み込んだ。
私達はこれから起こる罰ゲームを想像し、落ち込みながら守の後を着いて行った。
トンネル内は特に他のトンネルと違って変わっていることなんてなかった。街から離れているだけあっていたずら書きはあれど、どれも時間が経ちすぎて薄れている。
トンネル内にお地蔵さんや盛り塩、何かの御札があるとかもなく、本当に少し暗いトンネルという印象しか感じられなかった。
「き、キャ!今なんか動いた!!?」