山窩村
莉音はあからさまな驚き方をした。まるで才能の欠片も感じられない新米演劇者。守は真顔で莉音を見て、不気味に笑った。
「な、なんなの!?本当にいたんだから!ね、薫も見たよね!!?」
莉音は顔を真っ赤にして私に振った。あまりにも無茶で分かりやすい演技に私は戸惑ってしまった。
「え?あ、うん....な、何か黒っぽいやつだよね!?莉音の背中からスーッと出てきた気がする!」
「だよね!?背中に凄い違和感があったんだよ!ね、守!本当にここヤバいよ!!凄い心霊スポットだよ!」
私達の下手くそすぎる演技に鉄平は笑いを必死に堪えていた。私は顔が暑くなるのを感じ、恥ずかしさに目から涙が出そうになった。
「お前ら....流石に無理あるって....ぷッ!」
「ぅぅぅぅ....ほ、本当にいたんだから!私の言葉信じられないの!?」
「し、信じてるって....ククク....黒いやつだよな?ブフッ!」
私は恥ずかしさをぶつけるかのように、鉄平の肩を殴った。それでも笑いが収まらない鉄平に私は頬を膨らませながら睨みつけた。
「あ、もう出口だな〜。あぁ怖かった怖かった....じゃあさっさと帰ろうか?」
守はトンネル出口で夕日を浴びながらニヤッと笑いながら言ってきた。
莉音は目を見開き、守の前に立って出口の先に続く道路を指さした。