山窩村
莉音はそう言いながら軽快に石階段を降りていった。まだ危機管理能力がない幼い子供がはしゃいでいるようで、私はクスッと思わず笑った。
莉音はあっという間に石階段を降りきり、住人と思われる人集りへ向かった。
「こんにちは〜!私達山沢トンネルから来たんですけ」
莉音は明るく話しかけたが、何故かその声を詰まらせた。それどころか莉音は小さくわなわなと口を震わして後退りをしていた。
普通の出来事ではないと察した私達は降りるペースを早めて莉音の元へ急いだ。
「莉音!?どうしたの!?大丈」
莉音の元へ駆け付けた私も目の前の人達を見て息を飲んだ。莉音がここまでビクビクしてしまう理由が分かり、私もそれが伝染したかのように動けずにいた。
守と鉄平も同じ状態だった。ただ目の前の人達を見ることしか出来ず、唾を飲み込む音すら鮮明に聞こえそうな静寂が包んだ。
私達の目の前にいる人達は全員が仮面をつけていた。小さい子供、老人、色んな大人達、中にはロングヘアーに半分刈り上げている人や金髪など今どきの髪型をしている人もいた。
そのそれぞれが同じ仮面を付けて、黙り込んで私達をジッと見つめていた。白色で目と鼻と口に丸い黒があり、のっぽのような仮面。
あまりにも不気味な感じで私達は動けずにいた。そんな中、鉄平は少し身体を震わしながら私達を守るかのように前に立った。