山窩村
村一番と言っているだけあって中々に大きく、レンガやコンクリートではなく木材と石で見た感じ造られており、時代を感じさせるような立派な旅館だった。
「さーさー。中へ入ってくださいー。遠慮せずー」
八尾島は鉄平の腕を離すと、私達を旅館内に入るよう促した。
私達はその言葉を何となく聞き入れて、渋々旅館内に足を入れた。
玄関はとても清潔で、まるで新築と思える程ピカピカだった。そして目の前では何人かの着物を着ている人達が頭を床へ着けて出迎えてくれていた。
その人達もあの仮面を着けていた。
「ようこそいらっしゃいましたー。この村一番で村自慢の旅館、山窩旅館へようこそー。お部屋は既にご準備させて貰っているので、どうぞ上がってくださいー。」
一番先頭の紫の着物を着ている仮面の人が言うと、奥から何人もの仮面の従業員が出てきた。同じ種類の着物を着てる人、板前の人、更にはトイレ掃除の人が廊下の端に立って礼儀正しくお辞儀をしていた。
まるで王様を迎え入れるような接待で、私達はただただ困惑した。
紫の着物の女将である仮面の人を先頭に私達は部屋へと案内された。途中、女将の人に何かしら軽い質問をされたが、その棒読みと今の現状に困惑していたため、頭には全く入らなかった。