山窩村
私達が案内された部屋は玄関と同じく綺麗な部屋で、旅行で来ていたのならどれ程気分が高まっていたことやら。
「お食事は今ご準備させて貰っているので少々お待ち下さいー。後少ししたら八尾島さんがお話に来るそうなので、部屋からはなるべく出ないようにお願いしますー。」
「あ、いや...あの」
「それじゃあ失礼しますー。ごゆっくりー。」
女将は鉄平の問いかけを無視し、さっさと部屋から立ち去ってしまった。
この村に訪れてからわずか数分しかたっていないのに、私達は歓迎されて旅館に案内されている。まるで私達が来るのをわかっているかのような手際の良さに驚きを隠せなかった。
「....なんだろ...これ...なんでこんなトントン拍子で事が進んでるんだろ...」
「わかんねぇ...一体なんなんだここの人達。訳分からない仮面付けてるわ、絶望的な棒読み、不気味すぎる....」
鉄平は額に汗を垂らしながら頭を抱えた。それもその筈、誰一人としてこの状況を理解できるわけがない。
すると、視界の端で莉音が顔を険しくしながらスマホをいじっているの映った。
「莉音どうかしたの?」
「いや....鳥居までは大丈夫だったんだけどさ...今圏外になってて...」