山窩村
「お、俺達はここには居れません。今すぐ帰りますから...」
「....なんでですかー?この村の事嫌いになったんですかー?」
「い、いや...そんな事じゃ....」
鉄平は何か言いたげな表情をするだけで、何も言わなかった。いや、言えなかったのだ。正直なことを言ったらそれこそ強硬手段に入られるし、どんなことをされるか分からない。
鉄平は自然にこの村から出る方法を見出そうとしていたが何も浮かばず、黙り込んでいた。
「あ、私達お金持ってきてないんです。この村には散歩ついでに辿り着いた感じなんで、お金なんて一銭もないんです。」
私は咄嗟に思い付いた事を八尾島へ伝えた。我ながらいい案だと私は心の中で自分を褒めた。
そして、この完璧と思えた策はすぐに壊されるとは思いもしなかった。
「...お金なんていいですよー。全て私達のご馳走です。歓迎されている皆様方からお金を貰うなんて..それこそ罰当たりというものですー。」
「あ....そう...ですか...」
「あ!そうだ!お母さん!あんまり遅いと親が心配しちゃうから帰らないと!」
「それならこちらから手紙を送りますー。ご住所を言ってくだされば、私達がやりますのでー。」
莉音の意見もサラリと躱されてしまった。八尾島は何としてでも私達をここから出さないでいる気がする。