大人になんて、ならないで。
真矢くんは口元まで布団をかぶって、視線だけ私に向ける。
口が見えてなくても、真矢くんが優しく微笑んでいることは、目だけでわかった。
「……それより、まだ朝の5時じゃん…。
あと3時間寝かせて…」
「……真矢くん」
「……なに?」
目を閉じて、眠そうに…っていうか、半分もう寝てるようなかすれた声で真矢くんが返事をする。
もぞもぞとソファーの上で寝返りをうつ真矢くんの頭を、そっと撫でた。
「……それ、気持ちいい」
「真矢くん。
……私がお弁当作ったら、食べてくれる?」
「………ん…」
短く返事をしてすぐ、真矢くんがスースーと寝息をたてた。
お弁当作っても、迷惑じゃないのなら…
お詫びに、真矢くんにお弁当を作ろう。