大人になんて、ならないで。
手が届く幸せ
「……安井さん」
「…はいっ」
「お口に合いませんでしたか…?」
「いえっ、
すごく美味しいです!」
金曜の夜。
部長が連れてきてくれたのは、オシャレなレストラン。
夜景が見える…ような場所ではないけれど、
オシャレ、というより可愛らしいというか…。
かしこまったような場所でもなくて、居心地がいい。
……それなのに。
「……考え事ですか?」
フォークを置いて、部長の視線が真っ直ぐに私に向けられる。
……考え事…そうだ、考え事。
何を考えてたっけ…。
……考えてるつもりなんてないのに
頭の中を、彼が支配してる。