大人になんて、ならないで。
めぐちゃんが、男に頭を下げてからアパートへ入っていく。
男はそれを見送った後、足音が離れていって。
……俺はその男を、走って追いかけた。
「すいません」
「…はい?」
男の後ろから声をかけると、男が不思議そうな顔で振り返る。
眼鏡をした、クールで知的な雰囲気のイケメン。
女性社員が一回は通る、というのも、わかる気がした。
「……さっき、女性と一緒にいましたよね?」
「?
そうですけど…」
「…どういう、関係なんですか?」
ただの上司と部下じゃ、ないんだろ?
じっと男を見ると、男は『あぁ』と何か納得したように声をあげた。