大人になんて、ならないで。
部長からは笑顔が消え、
冷たい瞳が俺を射抜いた。
「……どういう、ことですか…」
「子どものキミは、そんなこと考えもしないんだね。
じゃあ今、教えてあげるよ」
冷たくて、棒読みっぽい声に、
その続きが怖くなって、冷や汗がにじむ。
それを誤魔化すように、サイダーの入ったグラスをグッと握った。
「安井さんは、キミとの結婚を不安に感じている」
「……え…」
「当然だね。
契約書もない口約束…。
キミは高校生だ。恋愛というものに、一番敏感になる年頃。
どこかで気が変わって、自分との約束なんてなかったものになるんじゃないか…。
待たされる側は…本当につらいと思うよ」