大人になんて、ならないで。
……俺、ぼんやりとしか考えてなかった。
ウエディングドレスに身を包んだめぐちゃん。
子どもを抱くめぐちゃん。
俺とめぐちゃんと子どもで、笑い合う日常。
そんな、一部のビジョンしか、想像してなかった。
歳上のめぐちゃんが、今どんな気持ちでいるのかも。
この先の未来で、どんな不安を抱えるのかも…。
なにも……。
「………」
「…今言ったこともきちんと考えて、彼女との関係をどうするのか、決めてほしい。
“婚約者”という言葉を盾には出来ないからね。
“子どもの口約束”なんて、婚姻届っていう“大人の契約”には勝てないんだから」
『それじゃあ俺は失礼するよ』と言って、
会計を済ませて、部長はファミレスを出ていった。
……何も、言い返せなかった。