大人になんて、ならないで。
「……真矢くん」
「………」
茶色のくせっ毛の髪が、わずかに揺れる。
顔を俯かせたまま、真矢くんはだらりと力なくそこに座っていた。
「……体、平気なの」
少し枯れた、低い声。
「もう平気だよ」
真矢くん、風邪でもひいてるのかな。
薄着の真矢くんに、おばさんに渡されたマフラーを巻いてあげた。
「……ちょっとは温かいかな?」
「………」
「風邪…ひいてるの?
声、変。
喋りたくない?」
「……うるさいな」
真矢くんが、マフラーを巻いていた私の手を振り払った。
「もう会わないんじゃなかったっけ?
……さっさと帰れ」
「……真矢くん…」