大人になんて、ならないで。
「……え……?」
真矢くんのかすれた声が、震えている。
その声に、私も目頭が熱くなったけれど
それを我慢するように、ぐっと唇を噛んで。
真矢くんと目が合う瞬間、笑顔を見せた。
「……昨日はね、
お別れを言いに来たの!」
「……お、別れ…って、」
「……ハッキリわかったから…
女の子と会ってたのも、
昨日会いに来てくれなかったのも…
真矢くんにとって私は、その程度の女なんだなって。
だから……
私、部長と結婚することにした」
最後のは、ちょっとだけ意地を張った嘘。
声…震えてなかったかな?
真矢くんの未来を、汚したくない。
真矢くんにはきっと…私は相応しくないから。