大人になんて、ならないで。
「……な…んで…」
「真矢くんと私じゃ、つりあわないよ。
部長とだったら、幸せになれると思う。
私もそろそろ結婚したい歳だし、
子どもの遊びに付き合ってる余裕もないしさ」
「……遊び、って…」
「大きくなったら結婚するって、
……約束破ってごめんね」
そんな約束、
真矢くんは覚えてないと思うけど…
「……真矢くん」
“私のことは忘れて、幸せになってね”
その言葉を言ったら、泣いてしまいそうで。
誤魔化すようにぐしゃぐしゃと真矢くんの頭を撫でた。
真矢くんに背を向けて歩き出した瞬間、我慢していた涙が溢れ出して。
涙とともに、『好き』って言葉があふれて。
手で何度も涙を拭いながら歩いた。