大人になんて、ならないで。



『真矢く…』



『けっこんしてください!』




目の前の、小さな真矢くんが。



顔を真っ赤にして、そう言った。




『……え…』



『…けっこんしてください!』




もう一回。



向けられた視線は、まっすぐ逸らされることがないまま、



白いコスモスが、わずかに揺れていた。



……真矢くんの手が震えてる。



この小さな手が、一生懸命伝えてくれてるんだ。



……かわいくて、



愛しいなって。



本当に、思ったんだよ。



だから、言ったんだよ。



『あはは、大きくなったらね』



本当に…



真矢くんが大きくなったら、



結婚したいって思ってたんだよ。





< 238 / 276 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop