大人になんて、ならないで。
「……ここ最近、ずっと元気がなかったように見えましたが、
今日は一段とひどいですね。
メイクで頑張って隠していたみたいですが、目の腫れがひどい。
……なにかあったんですか?」
「……」
部長は優しい。
心配して言ってくれてるってわかってるけど、
触れてほしくない気持ちもあって…。
「そんな…ちょっと昨夜映画を見て泣いてしまっただけですよ」
「……隠すのなら、
告白の返事を今すぐ考えてもらいますが」
カチャン、と部長がコーヒーカップを置く。
頬杖をついて、じっと私を見つめる部長からは…逃げられるわけなくて。
ゴク、と唾を飲んだとき、目の前にあるアイスティーの氷が、カランと音をたてた。
「……全然、スッキリしないんです」