大人になんて、ならないで。



「……ここ最近、ずっと元気がなかったように見えましたが、
今日は一段とひどいですね。

メイクで頑張って隠していたみたいですが、目の腫れがひどい。
……なにかあったんですか?」



「……」




部長は優しい。



心配して言ってくれてるってわかってるけど、



触れてほしくない気持ちもあって…。




「そんな…ちょっと昨夜映画を見て泣いてしまっただけですよ」



「……隠すのなら、
告白の返事を今すぐ考えてもらいますが」




カチャン、と部長がコーヒーカップを置く。



頬杖をついて、じっと私を見つめる部長からは…逃げられるわけなくて。



ゴク、と唾を飲んだとき、目の前にあるアイスティーの氷が、カランと音をたてた。





「……全然、スッキリしないんです」





< 241 / 276 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop