大人になんて、ならないで。
「キミ…!」
「すみませんが、
こちらのお客様に用があるので」
急に椅子をひかれたかと思うと、
店内で、お客さんもいるというのにお姫様抱っこでかかえられた。
もちろんものすごく目立って、お客さんの視線を集めまくってたけど…
真矢くんはそんなこと気にしないまま、
私を連れてスタッフルームと書かれた部屋に入った。
「え…スタッフルーム…」
「俺、ここでバイトしてるから」
「そ…なんだ…」
……知らなかった。
でも、私は入っちゃダメだよね…!?
「あの…私、戻る…」
「ダメ」
私をお姫様抱っこしたまま、
真矢くんが事務用の椅子に座った。
「お、おろして…」
「やだ」
「やだって…」
「離したら、逃げるだろ?」
『だから離さない』と、私の腰にがっちりと腕をまわしている。