大人になんて、ならないで。
やっぱりあれ、聞こえてたんじゃん、真優のバカ。
「……聞きたくなかったよ、そんなこと。
でも聞こえちゃったから…
それからずっと、不安だらけだ」
「不安…って?」
「めぐちゃんが、その部長を好きになるんじゃないかって」
私が、部長を?
「部長は、上司だよ?」
「だから?
職場恋愛なんていくらでも聞く。
それから…夫婦になることだって」
ポツリと、小さく呟いたのとともに、
抱きしめる腕の力が強くなった。
「……どうしたら、
繋ぎ止めておけるんだろう」
「真矢くん…?」
「……“大人”じゃなきゃ、
めぐちゃんはすぐ逃げちゃう」