恐怖症、克服しますっ!
「早くっ、好きな人のところに戻って、よ……」
思わせぶりなんかしないで。
同情なんてしないで。
私を抱きしめたりなんてしないで。
「早くっ、行ってよ……」
そう言いながらも、一条くんの腕の中で泣き続ける私。
耳元で、『少し静かにして』と、一条くんが呟いたと思ったら。
一条くんの手が、私の頬に触れる。
ずっと、うつむいていた顔を引っ張られたと思ったら。
……唇に、柔らかいものが触れた。
それは一瞬だったけれど、涙を止めるには充分すぎる出来事で。
今……。
私、一条くんと、キス、した……?
戸惑う私に、一条くんは優しく微笑んだ。
「やっと泣き止んだ」
その笑顔は、他でもない、私に向けられていた。