恐怖症、克服しますっ!

「一条くん、ちょっと通してもらえる?」​


目の前にしゃがんでいる、男の子の奥から葵の声がする。

“一条くん”と呼ばれた、目の前に男の子は、後ろからの声に少し驚いた様子。

だけど、立ち上がって通路の端に寄ってくれた。


「あ、あおっ……い。……葵っ」

「美桜。大丈夫だから」


葵は“一条くん”がいた場所にしゃがみ、私の背中をさすってくれた。

「深呼吸だよ。ほら、吸って……」

私は、葵の声に合わせて深呼吸をする。


「あお、い」

「ん?」

葵は背中をさすってくれたまま、私の途切れ途切れの声を聞いてくれる。

私は、呼吸を乱しながらも、小さく声を出す。


「……分かった。伝えとく」

「ありがっ、と」

「伝えておくから、1回、廊下に出よう?」


私は頷いた。
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