あの日のこと
大学1年生 秋
初めてサッカーサークルの合宿に参加した。
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仲良い人がいるわけではない。
知った先輩がいるわけでもない。
高校時代にサッカー部マネージャーをしていたせいか
サッカーを見るのだけがただ好きだった。
そのノリで入学してすぐ勢いで入ったサークル。
毎回出るわけでもなくて気が向いたら出る。
そのくらいでも許されるから
気ままにサッカーを見るの楽しんでいる。
サークルに行けば話してくれる子も何人かいる。
私にはちょうどいい環境だった。
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合宿先は山の中にある温泉街だった。
その近くに大きなコートがあって
試合もちゃんと出来る。
サッカーも見れて、温泉まで楽しめるんだから
最高としか言えない。
コートでは赤と青のビブスを着た人達が
試合を始める。
高校みたいにガチガチで試合をするわけでもなく
みんなが楽しんで試合をする。
山の中を笛の音が鳴り響くと同時に
「今のオフサイドだろ!」
と、ふざけた素振りで審判に詰め寄る人に
「全然だわ!!」
点を決めた人と審判が声を合わせて言う。
審判をしている人も楽しそうに
詰め寄って来た人の頭をはたいて追い払う。
その一連の流れがおかしくて
私まで笑みが零れてしまう。
私はと言うと近くの展望台に登って
山の景色と試合を眺めていた。
展望台とは言ってもコートからは離れていなくて
そんなに高くもない。
コートと近くの木々を見渡せるくらい。
展望台には友達と話しながら試合を見ている人
監督に隠れて煙草を吸う人が何人かいて
そこそこ賑わっていて暇はしなかった。
───── 晴れだったら気持ちいいのに
生憎、今日は灰色の曇り空で少し肌寒い。
私は体操座りでひざ掛けにくるまって
下でしている試合を眺めていた。