大人になった日に、家族を見つけました
両親の冷たい目、妹の嗤い声に耐えられず、初音は二階へと階段を駆け上がった。

自分の部屋に着くなり、初音の目から涙があふれ出す。悔しくて、悲しくて、堪らなかった。体を震わせ、初音の口から嗚咽が漏れる。

振袖を着たかった。スーツで成人式に来る女の子はほとんどいない。みんな豪華な振袖を着て大人になった日を噛み締める。それが、妹のわがままのせいで奪われてしまった。

一階から聞こえてくる幸せそうな声を聞きたくなくて、初音は枕の下に自分の頭を押し込んで泣いた。



その日から、初音は気分がずっと落ち込んだままだった。

妹は両親と大喜びで成人式の日を待っている。初音が予約した着付けやヘアメイクは、全て妹に奪われた。

振袖など、初音にレンタルするお金がない。諦めるしかないのだ。

「初音」

十二月の終わり頃、初音が会社から家に帰ろうとすると、会社の前で声をかけられた。スーツ姿の詩音が微笑んで立っている。その顔を見るだけで、初音は何度も泣きそうになっていた。
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