大人になった日に、家族を見つけました

「もうこんな時間！早く支度しないと……」

時計を見て、慌てて初音は服を着替え始める。今日は彼氏である村崎詩音（むらさきしおん）とのデートの日だ。彼は若いながらも会社の社長をしていて、知り合いの紹介で出会って付き合い始め、もう三年になる。

スウェットにリボン付きのグレンチェックパンツに着替えて一階のリビングに向かう。階段を降りるたびに、いつも胸が締め付けられるのを感じる。この家に居場所がないと伝えているようだからだ。

「……おはよう」

初音がそう言ってリビングに入ると、朝ご飯を家族は食べていた。両親と初音の双子の妹が話をしている。初音の方を誰も見ることはない。

テーブルの上に、初音のご飯はなかった。いつもそうだ。初音は小学生の頃からずっと、自分の食事は自分で作っている。用意してもらえないから。

「そういえば、この前論文を先生が褒めてくれたんだよね〜」

妹の言葉に、両親二人は「すごい！」とニコニコしながら喜んでいる。朝ご飯を用意する初音の胸がチクチク痛んだ。