大人になった日に、家族を見つけました
初音の稼いだお金は、一割を除いて全て家に吸い取られている。妹に両親は贅沢を許し、妹は遊び放題のためだ。

これからも、初音が家族に愛されることはない。それは初音自身がよくわかっている。ただ家にお金を入れるため、初音はこの家にいるのだ。

ただ初音にとって唯一の救いは、成人式に振袖を着させてもらえることだ。ずっと憧れていた振袖を着させてもらえないと初音は覚悟していたが、妹が「成人式とかつまんなさそうだし、行かない」と言ったため、初音は祖母の家にある赤い豪華な振袖を着ることが許されたのだ。

軽く朝ご飯を食べ、メイクなどを済ませた後、初音は家を出る。その際、誰も「行ってらっしゃい」と言ってくれなかった。



待ち合わせ場所へ初音が行くと、女性の注目を集めている男性の姿があった。白い息を吐くその姿でさえ、どこか色っぽい。

白いニットに紺のコートを着た男性が、初音の彼氏である詩音だ。初音は胸を高鳴らせながら詩音に駆け寄る。

「詩音さん、お待たせ!遅くなってごめんね」

「いや、待ってないよ。そのコートとても似合ってる」
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