大人になった日に、家族を見つけました
初音に詩音は優しく微笑む。初音はホッとして笑った。詩音にふわりと頭を撫でられる。家族がくれないその温もりが、愛おしくてたまらない。

初音は、詩音と付き合うようになった頃、勇気を出して家族のことを話した。愛されたことがない、それを伝えた時、詩音は「なら僕がたくさん君を愛する」と言い、家族のくれない愛をくれたのだ。

手をつなぐことも、ハグも、キスも、褒められるということさえ、初音は全て詩音から教わった。そして、愛し愛される喜びを知ったのだ。

「今日はどこに行くの?」

「今日は寒いし、映画でも観に行こう。初音が前に見たいって言ってたやつがあるよね?」

「えっ、いいの?」

「うん。ほら、行こう」

初音は優しく手を取られ、ギュッと指を絡められる。恋人つなぎというものだ。何度しても初音は顔を赤くしてしまう。それを見て、詩音が「可愛いね」と囁く。

冷たい風が吹くたびに、詩音は「寒くない?」と訊ねて自分のマフラーを巻いてくれる。さすがに初音は申し訳なさを感じた。
< 5 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop