大人になった日に、家族を見つけました
「詩音さん、さすがにマフラーを取ったら詩音さんが寒いでしょ?」

「いいの!初音が風邪引くとダメだから」

そう言って、詩音はニコリと笑う。初音はギュッと強く手を握り返した。これで温かくなるとは思えなかったが、少しでも温もりを伝えたい。

「初音、ありがとう」

未だに慣れない「ありがとう」の言葉に、初音は照れながら詩音とのデートを楽しんだ。



詩音は会社の社長だが、庶民的な人のため初音が緊張するような高級な場所へ行ったりはしない。初音もそうしてくれた方が肩の力が抜けるため、嬉しい。

映画を観てからはカフェでお茶をし、ショッピングモールで色々見て回った。

「わっ!素敵なバッグ……」

詩音がトイレに行っている間、初音は近くにあったカバンを見ていた。どれもオシャレで、ほしくなってしまう。お金をほとんど取られているため、かばんを買うことができないのだ。

「た、高い……」

ショッピングモールのためか、どのバッグも安くて一万円だ。そんな大金を初音は出せない。
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