大人になった日に、家族を見つけました
「もういっそのこと、連れ去ってほしい……」

初音がそう呟き、居場所のない家のドアを開けると、「遅い!!いつまで遊び回ってたんだ!!」と玄関に両親が怒鳴りながら姿を見せた。こんなことは初めてで、初音は戸惑う。

「えっ?どうして怒ってるの?」

初音が訊ねると、「いいから来い!!」と両親にリビングに連れて行かれる。そこには、初音にとって最悪な光景があった。

「どう?めちゃくちゃ綺麗でしょ?」

妹が、初音が成人式で着る予定の振袖を着て満足げに笑っている。それを見て両親は「何を着てもあんたは似合うね〜」と言っていた。どういうことなのか、初音は理解できない。

「ど、どういうことなの?」

初音がそう言うと、「まだわかんないの?」と妹が嗤った。

「私、成人式に出ることにしたの。そのための振袖を試しに着てたってわけ」

「えっ!?あんた、出ないって言ってたじゃん!私はどうなるの!?」

混乱する初音に、「あんたはお姉ちゃんでしょ!妹に譲りなさい!」と母親が怒鳴る。父も、「この振袖はお前なんかより妹が着た方が似合う」と言った。
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