もう一度あなたに恋をする
八月になりプロジェクトが本格的に動きだした。誰が見ても立花さんではなく彼女が適任だったが専務からの圧力で彼女は外された。案の定、立花さんは刻一刻と変わる状況についてこれず度々会議が中断する。このままでは我が社の信用にも関わってくる。後に専務から何かと言われるだろうが俺の判断で立花さんを退席させ彼女を呼んだ。

彼女のおかげで会議もスムーズに進み、無事終えることができた。滝沢と立花建設の江川さんと話をしていると彼女の事を『あーかね!』と馴れ馴れしく呼び近づく男が一人いた。しかもその男の事を彼女も『浩介!』と聞いたことがない弾んだ声で呼ぶではないか。余りに近い距離で馴れ馴れしくしている姿に嫉妬と動揺を覚えた。
そして察しがいい滝沢と江川さんに『お前が女の事で動揺するの初めて見た!』と散々からかわれることになった。



彼女がプロジェクトメンバーに代わってしばらくした頃から妙な噂が社内で流れ出した。
俺の耳に入ったころには陰口だけでなく小さな事ではあるが実質的被害も出て来ていると言う。少しずつ酷くなってきたためチームのメンバーが俺の耳に入れたのだが、今まで気づかずにいた自分に腹がたった。


なるべく彼女の事を気にかけ過ごしていた。そして十二月に入ったある日とんでもない事が起こった。
彼女のパソコンが初期化されデータが全て消えてしまっていたのだ。しかもカギをかけ保管してあったプロジェクト資料まで紛失していた。パソコンだけなら何らかの関係で消えたと思えなくもないが資料全ての紛失までとなると誰かが意図的に行ったとしか思えない。
犯人は絶対に許さない。彼女への嫌がらせだけではなく、これは会社の信用にも関わる事案である。しかし今は犯人捜しをする前に午後からの合同会議に向け資料の復元を急がなければ。メンバーを集め事の次第を説明し箝口令をしいた。

たぶんこれは彼女に対する嫌がらせの一環だろう。誰がやったのかは分からないがまさかここまでの事をするとは想像もしなかった。このまま放置していれば彼女自身に危害を加えられてもおかしくはない。

彼女の事は絶対に守る。

そう思っていたのに・・・。
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