もう一度あなたに恋をする
立花さんは相変わらず一人ブツブツと語り続けている。

「あの子が悪いのよ、佑さんを私から奪い取るから。」
「あの子どんなに嫌がらせしても変わらないし佑さんは余計に彼女から離れないし。」

そうしているうちに専務が部屋に飛び込んできた。

「紗香を無理やり連れてきて、犯人扱いか!」

秘書から簡単に説明されたのであろう。姪っ子が問い詰められていると、かなり興奮していた。

「専務、落ち着いて下さい。彼女には知っている事を聞こうと思っているだけですから。」

「こんなに周りを囲まれて、本当の事を言えるか!紗香を悪者にするつもりだろう!」

専務をなだめている間も立花さんはブツブツと語り続けていた。そして室内が一瞬静まった時、彼女の口から真実であってほしくなかった事実が語られた。

「叔父様?私ねあの子が絶対に責任取らされると思ってデータも資料も破棄したの。それなのにあの子、簡単に復元しちゃうんだもの。しかも佑さんったら褒めてるし。ちょうどね階段を降りるあの子が見えたから背中を押してあげたの。ケガをしたら会社来れないでしょ?そしたら佑さんとあの子会えなくなるし、佑さんの目も覚めるわ!いい考えでしょ?」

その場にいる全員が目を見開き固まった。専務に至っては顔を青ざめ膝をつき座り込んでいる。
そんな皆の様子も気にすることなく彼女は満足げに笑っている。彼女の心は壊れてしまっている。

「警察に連絡を入れます。」

社長秘書が受話器を手に取った。

「警察はダメだ!紗香を見てみろ!心神喪失だ!警察じゃなく病院だ!」

叫びながら電話をかけさせまいとする専務。

「専務、九条さんが病院に運ばれた時点で警察に事情は聞かれています。今まではまだ事故と事件の両方で捜査されているようですが。」

「じゃ、じゃあ事故と言う事に・・・」

「あの時点でデータ紛失の話も警察に知られています。それに以前から続いていた九条さんに対する嫌がらせの件も。いずれ分かる事ですよ。立花さんのためにもちゃんとしましょう。」

「だが・・・。」

まだ姪っ子が可愛いのか何とかしようとする専務にだんだんと腹が立ってきた。

「専務!九条さんは今朝容体が急変し緊急手術を行いました。まだ今も意識は戻っていません。いくらその気は無かったと言っても立花さんがした事は殺人未遂です!」

「殺人・・未遂・・・。」

やっと事の重大さに気づいたのか専務は『申し訳ない。後は任せていいか。』そう言い部屋を後にした。

その後、立花さんは連絡を受けやって来た警官に連れられ警察署に向かった。俺も事情説明のため警察に行き家に戻ったのは日付を超えてからだった。
シャワーを浴び明日からの事を考える。日曜日、休日出勤になるが皆に出て来てもらおう。今日の説明と月曜からの事を決めなければ。

明日は社長も病院に顔を出すと言っていた。俺も社長が行くまでに行こう。
佑はたぶん九条さんの傍を離れず付いてるだろうから。
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