もう一度あなたに恋をする
「あかねー!」

日曜の午後、ノック音と同時に部屋に飛び込んできたキレイなお姉さん。
そしてギューっと抱きしめられています。

「もう!夏樹さん!朱音ビックリしてるじゃないですか!」

「あっ、ごめんごめん。うれしくてつい。」

お見舞いに来てくれたのはキレイなお姉さま達。私に抱きついてたのが松本夏樹さん、注意してたのが大槻みどりさん、後ろで呆れてたのが笹井みのりさん。

「私たちのこと分かる?」

おそるおそると言う感じで聞かれた。

「はい。と言っても松本さんが作って下さったプロフィール帳のおかげですが。」

「あかねー。」

松本さんがトーンダウンして私の名前を呼ぶ。やっぱり忘れてるって不快にさせてしまったと俯きかけた私に

「名前!」

「名前?」

「そう、前は名前で呼んでくれてたの。それにそんなよそよそしい喋り方イヤ!」

「イヤ!って、子供か!ごめんね、朱音が一番困惑してるのに。」

とみのりさんが入室時と同じく呆れた顔で夏樹さんに注意をしている。その横でみどりさんが『いつもの事よ』って笑いながら見守っている。

「ありがとうございます。」

なんでこんないい先輩たちのこと忘れちゃったんだろう。そう思うと涙が溢れてきた。また夏樹さんに『朱音が無事でいてくれただけでいいの』と言われ抱きしめられた。その後一時間ほど楽しくお喋りをして先輩たちは帰って行った。




久瀬さんは毎日七時ころになると病室を訪れてくれた。そして早期復帰を目指す私に今まで私が東京でしてきた仕事の事を持ち出せる資料まで持って来て教えてくれた。私がしていた仕事は大阪時代とさほど変わりは無く少し安心した。

「でっ、九条が今メインでしている仕事がこれ。」

パソコンの画面から目が離せなくなった。

「街を造るプロジェクト・・・。」

高校時代からの私の夢の一つ、街づくり。それに関わっていると思うと嬉しさがこみ上げ早く戻りたいと思う。しかしそれと同時に何か頭の中がモヤっとする。

この感覚久しぶりだ・・・。刑事さんと話して以来だ。

「大丈夫か?誰か呼ぼうか?」

私の変化に気づいてくれる。

「大丈夫です。何かモヤっとして。」

「そうか。今日はこれで止めておこう。もうすぐ八時になるしな。ゆっくり休め。」

そう言ってまた頭を撫でて久瀬さんは帰って行った。帰り際にはいつも私の頭撫でて帰って行くな。そう思ったらまたモヤっとする。

この感じなんだろう。忘れた記憶を思い出そうと脳が頑張ってるのかな・・・。
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