もう一度あなたに恋をする
やっと職場に朱音が戻ってきた。
俺は通勤ラッシュにもまれるのが心配で送迎をすると提案したが『入院中も私の為に沢山時間を割いて頂いたのに退院後まで仕事の邪魔はしたくないです。』と拒否された。それでも粘り朝の迎えだけは受け入れてもらった。帰宅時も心配だから自宅に着いたら連絡を入れると約束を取り付けた。俺は不満でしょうがないが朱音の中で俺は恋人ではなく只の上司、余り強く言い切れない。
社に着き朱音の姿を見た社員たちがざわついた。朱音が入院する事になった原因を知っているから。
他の社員たちはどう思っているかは知らないが、チームのメンバーは朱音の復帰を心待ちにしていたのでチーム内の雰囲気はとても良かった。しかし懸念していた通り華乃がその空気を乱してくれた。女の勘なのか朱音をけん制するかのように俺の事を『佑』とわざと呼び、挙句『プロジェクトの仕事を私が代わる』と皆に聞こえるように言う始末。チーム内だけではなく部署全体の雰囲気までもが悪くなりそうだ。
まだ仕事がしたそうな朱音に『定時あがり、約束忘れた?』と帰宅させ一時間近くが経った。会社から朱音の家まで約四十分ほどで着くはずだが連絡がまだ来ない。仕事が手に着かずスマホばかり気にかかる。やっと彼女から連絡が入ったのがそれから二十分ほど経った頃だった。しびれを切らし電話をかけようとスマホを手に廊下に出たところで待ちに待った朱音からの着信があった。
「遅かったから心配した。体調大丈夫か?」
「ごめんなさい。電車混んでたので一本見送って、帰りにスーパー寄ってたので。駅に着いた時点で連絡入れればよかったですね。」
「いや、ちゃんと家に着いてからの連絡でいい。」
声を聞きホッとした俺はようやく仕事に集中する事ができた。
翌日以降も朝は迎えに行き、帰宅時も時間が合わない時以外は車で送った。
そんな毎日を二週間ほど送っていたある日、また華乃がとんでもない事を大きな声で言い出した。
「ねえ、勤務時間内にケガをしたからって上司がそこまで世話をしないとダメなわけ?」
「何がですか?」
始業時間ギリギリに来たと言うのに自分のデスクにも行かず俺の横まできて質問をして来た。
「九条さんの送り迎え。」
「心配だからしてるだけですよ。九条さんは遠慮してるけどね。」
「じゃあ、私も明日から同乗してくよ。」
「は?」
「だって彼女以外の人を助手席に乗せてるって、やっぱりいい気しないし。」
こいつ何言ってんだ?朱音に目をやるとやはり申し訳なさそうにこちらを見て何か言いかけている。たぶん『もう電車で通勤します。』だろう。そして華乃の口ぶりから俺の彼女は華乃だと勘違いしているのだろう。俺には朱音しかいないのに。
「大塚さんに気にしてもらわなくても大丈夫ですよ。俺が好きでしてることですから。」
「でもっ」
「彼女でもない赤の他人が、俺がしている事に口出しするな。」
かなり冷たい声で言ったおかげか華乃はその後何も言うことなく自席へ戻っていった。
それよりも華乃との契約を三月末までで切るために早くアシスタントを探さなければ。華乃の今の言動でますます雰囲気が悪くなっている。
俺は通勤ラッシュにもまれるのが心配で送迎をすると提案したが『入院中も私の為に沢山時間を割いて頂いたのに退院後まで仕事の邪魔はしたくないです。』と拒否された。それでも粘り朝の迎えだけは受け入れてもらった。帰宅時も心配だから自宅に着いたら連絡を入れると約束を取り付けた。俺は不満でしょうがないが朱音の中で俺は恋人ではなく只の上司、余り強く言い切れない。
社に着き朱音の姿を見た社員たちがざわついた。朱音が入院する事になった原因を知っているから。
他の社員たちはどう思っているかは知らないが、チームのメンバーは朱音の復帰を心待ちにしていたのでチーム内の雰囲気はとても良かった。しかし懸念していた通り華乃がその空気を乱してくれた。女の勘なのか朱音をけん制するかのように俺の事を『佑』とわざと呼び、挙句『プロジェクトの仕事を私が代わる』と皆に聞こえるように言う始末。チーム内だけではなく部署全体の雰囲気までもが悪くなりそうだ。
まだ仕事がしたそうな朱音に『定時あがり、約束忘れた?』と帰宅させ一時間近くが経った。会社から朱音の家まで約四十分ほどで着くはずだが連絡がまだ来ない。仕事が手に着かずスマホばかり気にかかる。やっと彼女から連絡が入ったのがそれから二十分ほど経った頃だった。しびれを切らし電話をかけようとスマホを手に廊下に出たところで待ちに待った朱音からの着信があった。
「遅かったから心配した。体調大丈夫か?」
「ごめんなさい。電車混んでたので一本見送って、帰りにスーパー寄ってたので。駅に着いた時点で連絡入れればよかったですね。」
「いや、ちゃんと家に着いてからの連絡でいい。」
声を聞きホッとした俺はようやく仕事に集中する事ができた。
翌日以降も朝は迎えに行き、帰宅時も時間が合わない時以外は車で送った。
そんな毎日を二週間ほど送っていたある日、また華乃がとんでもない事を大きな声で言い出した。
「ねえ、勤務時間内にケガをしたからって上司がそこまで世話をしないとダメなわけ?」
「何がですか?」
始業時間ギリギリに来たと言うのに自分のデスクにも行かず俺の横まできて質問をして来た。
「九条さんの送り迎え。」
「心配だからしてるだけですよ。九条さんは遠慮してるけどね。」
「じゃあ、私も明日から同乗してくよ。」
「は?」
「だって彼女以外の人を助手席に乗せてるって、やっぱりいい気しないし。」
こいつ何言ってんだ?朱音に目をやるとやはり申し訳なさそうにこちらを見て何か言いかけている。たぶん『もう電車で通勤します。』だろう。そして華乃の口ぶりから俺の彼女は華乃だと勘違いしているのだろう。俺には朱音しかいないのに。
「大塚さんに気にしてもらわなくても大丈夫ですよ。俺が好きでしてることですから。」
「でもっ」
「彼女でもない赤の他人が、俺がしている事に口出しするな。」
かなり冷たい声で言ったおかげか華乃はその後何も言うことなく自席へ戻っていった。
それよりも華乃との契約を三月末までで切るために早くアシスタントを探さなければ。華乃の今の言動でますます雰囲気が悪くなっている。