もう一度あなたに恋をする
ドキドキが収まらず早く寝なければと思えば思うほど眠れず、眠りについたのは三時を過ぎていただろうか。出かける準備のため休日だが七時に目覚ましをセットしていたので睡眠は四時間ほどしか取れなかった。
車の中、寝ないように気をつけなきゃ・・・。
朝食を取り洗濯と掃除を簡単に済ませ時計を見ると九時四十分過ぎ、家の中で待っているのも落ち着かないので荷物を持ちマンションのエントランスを出ると、そこには既に久瀬さんの車が止まっていた。
「すみません、お待たせしました。」
「いや、俺が早く来すぎたから。行こうか。」
久瀬さんが運転する慣れた助手席のはずだが今日はいつも以上に緊張する。
一時間ほど車を走らせ着いたのは昨年暮れにオープンした水族館だった。
「前に行ってみたいって言ってたから。少し混んでてももう大丈夫かなと思って。」
入院中テレビでオープンのニュースを見て確かに『いいなー、行ってみたい。』と呟いたことがあったが、まさかそんな一言を覚えてくれたとは。『もう大丈夫かな』とはたぶん私の体調の事だろう。
春休み真っ只中の水族館は人でいっぱいだった。それでも頭の上を魚たちが泳ぐトンネル、宇宙に浮かんでいるかのようなクラゲの空間にイルカショーどれも楽しかった。
水族館を出て隣にあるショッピングモールで遅いランチを終えモール内を少し見て回る事にした。
「エレベーターも混んでるし階段で降りましょうか。」
そう提案しエレベーターのすぐ横の階段を降りようとした時、後ろから走ってきた男の子とぶつかり体が前に傾いた。
落ちる!!
そう思い咄嗟に目をつぶったが落ちる感覚がない。目を開けると私は久瀬さんの腕の中にいた。
片手で私を抱きとめ、もう片方の手は落ちないよう手すりがしっかり握られていた。
「危なかった。大丈夫?」
私を抱きしめたまま階段に座り込んでしまった私たちを見て、先ほどぶつかった子が数段下から『ぶつかってごめんなさい。』と頭を下げている。
「もう走るなよ。」
「はい。」
男の子が階段を降りて行くのを見ていると急に息が苦しくなってきた。頭もフラフラする。
「九条?」
私の様子がおかしい事に気づいた久瀬さんが私を呼んでいるが返事が出来ない。久瀬さんの服を強く握りしめた。
「朱音!」
遠くで久瀬さんが私の名前を呼んだ気がするが、私の意識はそこで途切れてしまった。
車の中、寝ないように気をつけなきゃ・・・。
朝食を取り洗濯と掃除を簡単に済ませ時計を見ると九時四十分過ぎ、家の中で待っているのも落ち着かないので荷物を持ちマンションのエントランスを出ると、そこには既に久瀬さんの車が止まっていた。
「すみません、お待たせしました。」
「いや、俺が早く来すぎたから。行こうか。」
久瀬さんが運転する慣れた助手席のはずだが今日はいつも以上に緊張する。
一時間ほど車を走らせ着いたのは昨年暮れにオープンした水族館だった。
「前に行ってみたいって言ってたから。少し混んでてももう大丈夫かなと思って。」
入院中テレビでオープンのニュースを見て確かに『いいなー、行ってみたい。』と呟いたことがあったが、まさかそんな一言を覚えてくれたとは。『もう大丈夫かな』とはたぶん私の体調の事だろう。
春休み真っ只中の水族館は人でいっぱいだった。それでも頭の上を魚たちが泳ぐトンネル、宇宙に浮かんでいるかのようなクラゲの空間にイルカショーどれも楽しかった。
水族館を出て隣にあるショッピングモールで遅いランチを終えモール内を少し見て回る事にした。
「エレベーターも混んでるし階段で降りましょうか。」
そう提案しエレベーターのすぐ横の階段を降りようとした時、後ろから走ってきた男の子とぶつかり体が前に傾いた。
落ちる!!
そう思い咄嗟に目をつぶったが落ちる感覚がない。目を開けると私は久瀬さんの腕の中にいた。
片手で私を抱きとめ、もう片方の手は落ちないよう手すりがしっかり握られていた。
「危なかった。大丈夫?」
私を抱きしめたまま階段に座り込んでしまった私たちを見て、先ほどぶつかった子が数段下から『ぶつかってごめんなさい。』と頭を下げている。
「もう走るなよ。」
「はい。」
男の子が階段を降りて行くのを見ていると急に息が苦しくなってきた。頭もフラフラする。
「九条?」
私の様子がおかしい事に気づいた久瀬さんが私を呼んでいるが返事が出来ない。久瀬さんの服を強く握りしめた。
「朱音!」
遠くで久瀬さんが私の名前を呼んだ気がするが、私の意識はそこで途切れてしまった。