もう一度あなたに恋をする
急いで家を出て大通りでタクシーに乗り公園に向かった。

入り口には久瀬さんはいない。何時に来てほしいとか書いてなかったからまだ仕事中かなと思いながら公園の中に入った。

公園を少し入ったところに小高い滑り台の丘がある。



その丘の上に・・・・・・いた・・・・。


「朱音!」


離れていてもわかる満面の笑顔で私の名前を呼ぶ。


「どおしたんですか?こんな所に呼び出して。」

「とりあえず登ってきて。」


丘に頂上に登ると公園がよく見渡せた。そして私が入院いていた病院も公園の木々に遮られることなくよく見える。


「朱音、誕生日おめでとう。」

「ありがと。」

暫く沈黙の後、私の手を握り大きく息を吸い込んだ久瀬さんが話始めた。


「あの病院に運ばれ、なかなか目覚めなくて朱音を失うんじゃないかって心臓が潰れそうだった。・・・やっと目覚めた朱音に後悔はしたくなくて告白して気持ちが通じた時は凄く嬉しかった。」

「うん」

「でも急に意識を失って緊急手術、そして記憶喪失。俺の事を忘れてしまっていると知った時はこの世の終わりに感じた。」

「ごめんね。いっぱい心配かけて。」

そう言うと久瀬さんは首を振りほほ笑んだ。

「でも俺を忘れてしまっても朱音の事を手放すことは絶対にしたくなかった。もう一度俺の事を好きになってもらえばいいって。」

「うん。」

「記憶が元に戻ってからはもう手放せなくて、自分の直ぐ近くに朱音がいないと心配で落ち着かなくて、強引に同棲も進めてごめん。」

私も嬉しかったからと伝えたいが涙をこらえていて声が出ないので首を振る事しかできない。

私の手を握っていた右手を離しポケットを探って取り出されたのは小さな宝石箱。


「朱音、俺と結婚して下さい。久瀬朱音になって。」


私は彼の胸に抱きついた。
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